Columnコラム

技術者によるテクニカルコラム:
自動巻き腕時計について

自動巻き時計を扱う際、どのようなポイントに注意すれば良いのでしょうか?現代では多くの人が腕時計をファッションやステータスシンボルとして愛用していますが、その中でも自動巻き機構を搭載したものは特に人気があります。しかし、扱い方やメンテナンスの方法を間違えると、その魅力を十分に活かせないことも。このコラムでは、Sinn(ジン)の腕時計や搭載されているジン・テクノロジーについて熟知している技術者が、自動巻き時計を扱ううえで大切な一般知識から、Sinn(ジン)に特化したテクニカル情報、アフターサービスについて何回かにわたり詳しく解説します。自動巻き時計に関する知識を深め、その魅力を再発見してください。

自動巻き時計

自動巻き時計の基本メカニズム

自動巻きの腕時計は、装着者の手首の動きによって発生するエネルギーを利用して駆動する時計です。自動巻き時計の内部には、ローターと呼ばれる半円形の金属部品があります。ローターは腕時計の内部で自由に回転できるように取り付けられており、腕の動きに応じて回転します。この回転運動が歯車に伝わり、メインスプリングと呼ばれるゼンマイを巻き上げる仕組みです。メインスプリングが巻き上げられると、そのエネルギーが時計全体に供給され、歯車を介して時計の針を動かします。自動巻き機構を搭載した腕時計では、定期的に腕に着けている限り、時計を手動で巻く必要がほとんどありません。

自動巻き時計

自動巻き機構には、時計が止まらないようにするための「パワーリザーブ」が備わっており、これは時計がどれくらいの時間動き続けられるかを示します。Sinn(ジン)が現行の時計に採用しているムーブメントのパワーリザーブは約38時間から60時間です。手首の動きによってゼンマイが巻かれるこの自動巻き時計のメカニズムは、電池を必要としないため環境にも優しい選択です。さらに、時計の精密な動作とその独特の動きは、デジタル時計にはない魅力を提供します。

自動巻き時計

時計の内部構造を観察できるシースルーバックモデルも多く、Sinn(ジン)のロゴマークが刻印されたローターの回転や機械の動きを直接見ることができるのも楽しみの一つです。以下の検索ページでは、「機能/仕様」でシースルーバックの時計を抽出してご覧いただけます。

時計の検索ページ

自動巻き時計の基本メカニズムは、複雑な精密機械工学に基づいており
その動作は時計製造技術の粋を集めたものと言えるでしょう。

#01自動巻きの腕時計を
手巻しても大丈夫?

時計を着用していれば腕の動きでゼンマイが自動的に巻き上がる自動巻き機構は、機械式の腕時計にとってとても便利な機構のひとつです。ただし、ゼンマイの巻き上げ量が不足している場合は精度不良が発生したり、持続時間が短くなったりする場合があります。自動巻き式の腕時計を止まった状態から着用する場合や、着用時間が短い場合、また、時計を着けている腕の運動量が少ない場合などにはゼンマイが自動的に巻き上がらず、動作が不安定になる場合がありますので、リューズを操作してゼンマイを巻き足してご使用いただくことをおすすめします。

ねじ込み式のリューズの場合はねじ込みを解除した状態にしたうえで、動画のようにリューズを人差し指と親指でつまむようにしながら出来るだけゆっくりと大きく動かしてリューズを30~40回程度まわしてゼンマイを巻き上げてください。『ゆっくり』というのはとても重要なキーワードです。自動巻き時計の各パーツは、前述のようなメカニズムにより繊細な作りになっているため、人の手の力で素早くリューズをまわしてしまうと必要以上の力が時計のパーツに加わり、パーツに負担がかかってムーブメント破損の原因につながることがありますのでご注意ください。

必要以上に巻いた場合でも、ゼンマイがスリップしてゼンマイ切れを防止する安全機構が備わっていますので、安心してリューズをゆっくりと操作してゼンマイを巻き上げてください。巻き上げた後は時刻合わせなどを行い、リューズを元のポジションに戻してください。ねじ込み式リューズを備えた時計の場合は確実にリューズをねじ込むこともお忘れなく。

#02ローターはムーブメントによって
巻き上がる方向が決まっています

ムーブメント内部のローターが重力によって振り子のように動くことでゼンマイを巻き上げるのが自動巻きの仕組みですが、この巻き上げの方向はすべての自動巻き腕時計で同じではありません。時計のムーブメントによって、両方向巻き上げ式と片方向巻き上げ式があります。

両方向巻き上げ式のムーブメントでは、ローターがどちらの方向に回転してもゼンマイが巻き上がります。腕の動きに関係なくエネルギーを効率的に時計に蓄えることができるため、日常使用においてより安定した動作が期待できます。

  • 両方向巻き上げ式

    SW200・220・300・330
    ETA2824・2836・2892・2893・2671・2678

    両方向巻き上げ式
    456、556、857、856、EZM3、EZM7など
  • 両方向巻き上げ式 / クロノグラフ

    LJP8000

    両方向巻き上げ式 / クロノグラフ
    103.ST.DIAPAL、900.DIAPALなど

一方、片方向巻き上げのムーブメントでは、ローターが特定の方向に回転することでのみゼンマイが巻き上がります。これは、効率的なエネルギー伝達を可能にしているため、腕の動きが少ない場合でもきちんと巻き上げをする反面、時計が特定の動きをしないと巻き上げが不十分になる可能性があります。

  • 片方向巻き上げ式
    時計回りで巻き上げ

    Concepto C99001、LJP L100・L110・L112
    SZ01・SZ02・SZ03・SZ05・SZ06
    Valjoux7750、SW500・510

    片方向巻き上げ式時計回りで巻き上げ
    103、356、6000、903.II、EZM13.1など
  • 片方向巻き上げ式
    反時計回りで巻き上げ

    Lemania 5100

    片方向巻き上げ式反時計回りで巻き上げ
    EZM1、142など

自動巻きの腕時計を使用する際には、どのようなムーブメントが搭載されているかを理解することで、最適なパフォーマンスを享受できます。どちらのタイプでもリューズによる巻き上げが可能なので、長時間使用していない自動巻き時計の着用開始時や、運動量が不足しているときは巻き足して使用していただくと時計は安定して駆動します。

#03曜日表示は独・英から選択できます

Sinn(ジン)が採用している自動巻きムーブメントを搭載しているいくつかのモデルの曜日表示についてご説明いたします。3針デイデイト機能が付いた104シリーズの曜日板にはドイツ語と英語による2か国の曜日が印刷されています。この曜日板はリューズ操作により指定のどちらかの表示に切り替えることが出来ます。例えば英語表示からドイツ語表示に切り替える場合、まずは時計の針のポジションをカレンダー変更の禁止時間帯である午後9時から午前3時の時間帯以外にしていただき、リューズを一段引き出してカレンダー修正のポジションにします。そしてリューズを6時側にまわす(奥から手前)と曜日が英語⇒ドイツ語の順に早送りされますのでドイツ語の曜日を選択し、リューズを元のポジションに戻します。この操作を行うと、その後は日付が変わるたびに選択した言語の曜日が表示されます。ぜひ一度お試しください。この機能はEZM12にも搭載されています。

写真左は104用、右はEZM12専用。EZM12用はEとFの書体が独特でユニークです

写真左は104用、右はEZM12専用。EZM12用はEとFの書体が独特でユニークです。

また、103や356シリーズなどのデイデイト表示があるクロノグラフでは曜日表示はドイツ語が標準となっていますが、Sinn(ジン)では時計のご注文・ご購入の際に依頼していただければ無償で英語の曜日板に取りかえることができます。ドイツ語表示では馴染みがないという場合でも、一般的な英語表示を選択できます。

標準は写真左のドイツ語表記になっています(右が英語表記)

標準は写真左のドイツ語表記になっています(右が英語表記)。
ちなみに日曜日から土曜日はそれぞれ以下の表のとおりです。

SON MON DIE MIT DON FRE SAM

自動巻き時計は、機械式時計の中でも特に人気が高く、毎日の生活の中で自然に動力を得る便利でエコロジカルなアイテムです。時計の基本的なメカニズムを理解し、正しい使い方やメンテナンスを心がけることで、時計の魅力を十分に活かすことができます。自動巻き時計を手巻きしても問題ないのか、ローターの巻き上がり方向、曜日表示の選択など、自動巻き腕時計には知っておくべきポイントがいくつかあります。これらを理解することで、時計をより長く、快適に使うことができます。

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